周りにいた生徒達は昇降口に入ったのか、姿が見えない。

ただ、零ちゃんの名前を呼んでる。


「朝比奈様!こちらへ!」

「逃げて下さい!」


みんなが必死に叫んでるけど、当の零ちゃんは、恐怖で逃げることを忘れているみたいだった。



「零ッ……!」

「いけません西国様!危ないですわ!」


下に西国君がいて、零ちゃんのところにいこうとしてる。

周りが危険だから引き留めてるみたいだ。


「……会長、大丈夫ですから」

零ちゃんが危ない中に、何もしないなんてダメだ。

この学園にわざわざ転校してきた意味がないじゃない。


「おいっ!」

会長が叫ぶ中、窓に足をかける。


ここ3階だけど……楽勝かな?


「大丈夫ですってば、零ちゃんはちゃんと西国君のところに返しますから!」

「杏樹!」


怒りと心配の気持ちが混ざった声を背に、窓から下へ飛び降りた。