しかし、会長は「何でもない」と言って…教えてはくれない。

「まだ言う時期(とき)じゃねぇな」ってクスッと笑うことしかしなかった。



公園に入った時は、また夕日があったのに…今じゃ夜。

月が出ていた。



「今日…家にはご家族いらっしゃるのか?」

「……いないよ。どこだっけ…あ、今北京だ」


問い掛けに返すと、会長は一瞬…考えるような表情をして立ち止まる。


「……そうか」

それだけ言うと、また歩き出した。

道案内をして…あたしの家の前に着く。



「……10分やる。1泊分の着替えを持ってこい」

「え!?」

「あと9分56秒だ」

「ギャア!?」


会長に急かされ…訳もわからずに超特急で着替えを鞄に詰めた。

再び会長におんぶされて、連れて来られた場所は───…。