さっきから…ずっとイヤだった甘い香水の移り香。

陸の匂いをつけられた自分の体が、イヤでイヤでたまらなかった。


会長に抱き寄せられたことで、甘い香水とは全く逆の爽やかなシトラスミントの香りが漂う。


「……こんなに壊れるまで、我慢するな」


硬い胸板に顔をうずめると、耳元で諭すように囁かれた。

キュッと会長の服を握る。


「…仕事してたって、お前はまだ高3だ。大人びる必要はねぇよ」

「………」

「無理するな」


優しい手つきで、壊れ物のように触れてくる会長。

ちょっとだけ…黒くなった心が、元に戻った。




「……かい…ちょ……」

「ん」

「……傍に……いて……」

「ん。…ずっといてやる」


柔らかい声の返事が聞こえたと思うと…強く抱きしめられる。

自然と…あたしも、会長の背中に腕をまわした。