「失礼します」

頭を下げて、二宮さんと別れる。

背中を向けて、歩き出した瞬間。



「薫さん」


もう…その声だけで、誰なのか、わかってしまう。



とっさにロビーの観葉植物の影に隠れた。

二宮さんに笑顔で近寄る人を見る。


「待った?」

「全然、ランチしに行きましょ」


二宮さんが、さっきとは180°違う笑顔で、その人の腕に自分の腕を絡める。

全然違和感がない2人。

高校生でも……浮いてないよ。

むしろ……すごくお似合い。


誕生日は、あたしの方が早いのに……彼…陸の方が、ずっと大人っぽい。



────泣かない。

泣くのは──…1人になってから。

大丈夫…2年前の生活に戻るだけだよ。

我慢すれば、大丈夫。


もっと頑張らなきゃ。


頑張らなきゃ。