とっさに耳を塞いだ。


柚莉うるさいよ……。


「杏樹!なんでそれを先に言わないの!?」

「え………」


柚莉の部屋が、警察の取調室に変わる。

プールでのことも、根掘り葉掘り聞かれた。

柚莉……あなた警察官に向いてるんじゃないんですか?


「キスされたこと、彼には言ったの?」

「言ってません……」


柚莉の鋭い視線から逃れようと、アイスティーを両手で持ち、カランカランと氷をまわす。


陸には……キスされたことはもちろん、プールに行ったことさえ言ってない。

というかですね。

キスのことも、結構忘れてた。

あたしの頭の中は、『繭』と呼ばれた女の子の夢のことで一杯なんだもん。


「会長も限界なのかもしれないわね」

「限界?」

「好きな子に対する思いよ」

「会長って好きな人いたんだ」

「………」