「…いいや…聞いてねぇ…」
「…そっか。杏、ちょっと起きれるか?」
口で説明するより、本物を見た方が、わかりやすい。
俺の首筋に顔を埋めてる杏に、ちょっとお願いをした。
「零ちゃん…紙とペンを持って来て下さい…」
「え…うん」
朝比奈が、パタパタと自室へ行き…小さなメモ帳と黒のボールペンを持って来る。
受け取った杏が、サラサラとペンを走らせ、一枚メモ帳から切り取った。
チラッと俺を見る。
なんだ?
「…怒んないでよ?」
「は?」
意味不明な言葉を言い、口の中で、何かを唱えた。
指に挟まれたメモ紙が、形を変え……小さな人型になる。
「……てか、これ……俺?」
「正解…。小さい時の陸の式だよ」
杏が作ったのは、幼い頃の俺の式だった。


