印刷した資料に目線を落とす。

どうしたら……助かるんだろう。


おかしくなったのは、深谷さんだけじゃない。

他の被害者達もだ…。


2人目の被害者は……“母親”のことが視えない、覚えてない。

3人目の被害者は……“親友”のことが視えない、覚えてない。


3人とも…事件に遭うまで、1番近くにいて…大切だった人のことを自分の中から消してる。

視えなくなり…記憶からも消された人達の哀しみは、計り知れない。



あたしも…陸に忘れられた時は、すべての光を失ったと思った。

大切な人に存在を消されるのは―――……つらすぎる。


「生きてる心地はしないよね…」

「何がだ」

「へっ!?」

「何を考えてる」

「いやっ……何でもないです…」


いつの間にか、隣に立ってあたしの顔を覗き込んでいた会長に慌てて弁解した。