携帯に内蔵されているシンプルな着信音。


「陸…出ないの?」

「構うな。杏との時間を邪魔されたくねぇ…」

「いや……でも…」



あたしの後ろから、止まることなく聞こえてくる音。

かなり長いよ?



「……チッ……イイとこで邪魔しやがって」

「……大事な電話じゃないの?」



まだ鳴り続けてるし……。




あまりの長さに、一気に不機嫌モードになった陸。

まるで携帯に八つ当たりするように、着信の相手を見る。



「…………ざけんな」


うわ…、完璧…不機嫌モードだ。

額に怒りマークが見えます。



「わりぃ…ちょっと出てくるな」

「うん」



携帯を片手に、カーペットから立ち上がった。


「会社からだ」


あたしの頭を、優しくひと撫ですると、部屋を出ていく。

広い部屋に、あたし1人となった。