余程心配なのか、マンションのエントランスまで付いてきた先生。


「先生、ここまで来ればもう大丈夫だから」

クスクス笑う私に

「いや、部屋まで送る」

頑(かたく)なな先生。

根負けしたのは私。




――まだお昼過ぎ。

親がいなくても怪しまれない。



「分かった。ただし、玄関までね」

中にはまだ入れたくない。


「…分かった」


12階までエレベーターで上がるのが、こんなに早く感じた事はない。

狭い上に静かで、バクバクと胸を打つ音が聞こえてしまいそう。

早く着いて欲しいような、遅くなって欲しいような不思議な感覚。