「今日は送って行くぞ」

コートから車の鍵を出した。


「勉強教えてくれるんじゃないんですか?」

「今日はおしまい。それにお前、熱まだ出てんだろ?帰って寝ろ。今回は黙って送らせろよ」



「…帰りたくない…」

先生の言葉に小さい声で返した。


「あ?何か言ったか?」

「まだ帰りたくない」

目線を合わせないように、俯いた。

「馬鹿が。お前、その言葉は俺じゃなくて、彼氏に言えよ」


出て来そうになる自分の気持ちを抑え、なるべく明るく振る舞う。

「あはは。そうだね。カッコイイ彼氏が出来たら、早速言うわ。でも折角、学校来たのにとんぼ返りは嫌だな」

「帰っとけって。また熱でんぞ」

「えーヤダー。ご飯食べたい。お腹空いたぁ」

わがままな私のお願いは


「しょうがねぇなぁ。今日だけだからな」


の声で、叶えられた。