暫く夜景を眺めた後、一緒に展望内を回った。 混雑している所為で、自然と2人の距離も近くなる。 鼻を掠めていくのは、あの日の先生と同じ香り。 ふんわりと香る度に、鼓動がドクンと音を立てた。 甘過ぎる時間は、あっと云う間に過ぎていく。 携帯を胸ポケットから取り出した先生は、時刻を確認すると 「そろそろ行くか」 魔法を解く言葉を放った。 「……はい」 小さく頷く。 本当の恋人同士なら、「まだ、もう少し」なんて言えるのかもしれない。 けれど…私達は違う。 だから、私には出来ない。