チャイムが一時間目の終わりを告げる頃。



「そろそろ戻るか」

葉山の一言で、一緒に非常階段を後にする。


外気に触れていた為に、手足はすっかり悴(かじか)んでいる。

「…寒い」

手を擦り合わせ、息を吹き掛ける。


「大丈夫?」

冷たくなった私の手は、葉山の手に包まれた。

「…うん。大丈夫」




葉山から手を引き抜こうとしても、抜けない。

「ちょっと!離して!」

更に強く引いても駄目。


引いて駄目なら…押してみろ!!

強く引いた手を一気に突き出す。



……も、敢え無く失敗に終わった。