思いもしない苺先輩の表情に戸惑いながら、言われるがままにりんご飴を買った。
「ありがとう」
そう笑って受け取った苺先輩だけど、りんご飴を見つめる姿も悲しげで…。
何かあったのかな…。
喜ぶと思ってした事だけど、逆に悪い事をしてしまったのかもしれない。
「…大丈夫?」
申し訳ない気持ちになりながらも、理由を知らないから謝る事は出来なくて、出来るのは心配する事だけ。
「え?大丈夫だよ?」
何事もないように、苺先輩はまた笑おうとした。
だけど、苺先輩の顔からサーっと笑顔が消える。
……?
苺先輩の目の焦点は、俺には合っていない。もっと奥…。俺の後ろの何かを見ている。
何を見ているのか、振り返って確認しようとすると、「翔くん」と力ない声で呼ばれた。
「ごめん…あたし…帰る」
目に入ったのは、今にも零れそうなくらい目に涙を溜めた苺先輩。
そして、苺先輩は俺に背を向けていきなり走り出した。
「苺先輩っ!」
瞬時に追おうとするけど、何を見たのか気になって、振り返る。
「-…」
クラスメイトが居ても気付かないくらい沢山の人が居るのに、苺先輩が何を…誰を見ていたのか、分かってしまった。



