13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


思いもしない苺先輩の表情に戸惑いながら、言われるがままにりんご飴を買った。

「ありがとう」

そう笑って受け取った苺先輩だけど、りんご飴を見つめる姿も悲しげで…。

何かあったのかな…。

喜ぶと思ってした事だけど、逆に悪い事をしてしまったのかもしれない。


「…大丈夫?」

申し訳ない気持ちになりながらも、理由を知らないから謝る事は出来なくて、出来るのは心配する事だけ。

「え?大丈夫だよ?」

何事もないように、苺先輩はまた笑おうとした。

だけど、苺先輩の顔からサーっと笑顔が消える。

……?

苺先輩の目の焦点は、俺には合っていない。もっと奥…。俺の後ろの何かを見ている。

何を見ているのか、振り返って確認しようとすると、「翔くん」と力ない声で呼ばれた。

「ごめん…あたし…帰る」

目に入ったのは、今にも零れそうなくらい目に涙を溜めた苺先輩。
そして、苺先輩は俺に背を向けていきなり走り出した。

「苺先輩っ!」

瞬時に追おうとするけど、何を見たのか気になって、振り返る。

「-…」

クラスメイトが居ても気付かないくらい沢山の人が居るのに、苺先輩が何を…誰を見ていたのか、分かってしまった。