その時、苺先輩の笑顔が何故か悲しそうに映った。
冗談で言ったつもりだったんだけど、「浴衣姿が見たかった」なんて言うべきじゃなかっただろうか。
「まぁ、苺先輩私服も可愛いから良い!」
フォローするように言った言葉だけど、これも間違いなく本心。
「そんな事ないよっ!」
否定する苺先輩に、「そういう所も可愛い」と笑い掛けると、顔を真っ赤にさせた。
出店が並ぶ道を、二人肩を並べて歩く。
どこにでもある普通のタコ焼きやかき氷が、とても美味しく感じた。
射的で、首に赤いリボンが付いたクマのぬいぐるみを取ってプレゼントすると、苺先輩は喜んでくれた。
「俺達、周りからどう見えるんだろー」
聞かなくても“恋人同士”に見える事は分かっている。
分かっているから…この発言は苺先輩へのちょっとした意地悪。
告白してから、関係に進展があったわけじゃない。今も変わらぬ友達という立ち位置。
でも、今こうして二人で夏祭りに来ているのは、少し進展してるって思っても…いいよね。
この発言に苺先輩は答えてくれなかったけど、常時笑顔を浮かべてくれていて、今日がこの夏1番の幸せな思い出になると思っていた。



