そして…夏祭りの日は、すぐにやって来た。
「さすがにまだ…来てないか」
携帯で時間を確認すると、17時30分。約束の時間まで、あと30分もある。
入学式こそ遅刻した俺だけど、苺先輩との待ち合わせに遅れた事はない。
苺先輩に会えるのが本当に嬉しくて、1秒でも早く会いたくて、気付けば待ち合わせよりも、毎回かなり早く来ている。
それほど…好きになっていた。
苺先輩を待ちながら、視界に入るのは通り過ぎていく女の子達。
“女の子”だから目に留まるのではなくて、“浴衣姿”だから。
苺先輩も着て来るのかな?
何となく想像しながら期待していると、こっちに向かって歩いて来る小さな影が目に入った。
「苺先輩っ!」
目を凝らして確認なんかせず、俺は次の瞬間大きく手を振って彼女の名前を呼んだ。
すると、小さなその人は手を振替して、こっちに駆け寄って来る。
ひらひらと少しはためくスカートの裾。その下には空色のデニム。
「あっ、先輩浴衣じゃない!浴衣姿見たかったのに!」
ほんの少し残念でそう言うと、先輩は「ごめんごめん」と苦笑しながら謝った。



