13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


声の方に視線をやると、翔を探していた二人の後輩が駆け寄って来るのが見えた。
その後ろには、二人を追いかける都の姿。

「卒業おめでとうございますっ」

あっという間に、後輩は翔を囲むように挨拶していた。

「佳奈ごめんっ」

追い付いた都は、顔の前で両手を合わせ、小さな声で謝る。

「別にいいよ」

苦笑いを浮かべて応えると、

「冷静だね?」

少し不思議そうな顔をした。

「何が?」
「岡田の事好きなんでしょ?」

言いながら、視線をずらす都。

何が言いたいのかは、すぐに分かった。

都の視線を追って、目に写ったのは、翔と仲良く話す後輩。
翔は優しく笑って対応している。

冷静…。

私は翔が好きだけど…その光景に嫉妬なんてしない。

翔はモテるから、もちろん彼女だっていた。

その時でさえ…嫉妬という、特に特別な気持ちを抱いた事はなかった。

それは…

翔が本気じゃないのが分かってたから。

彼女がいた時も、女の子に囲まれている時も、そして今も…

翔は本当の笑顔を向けてはいない。