声の方に視線をやると、翔を探していた二人の後輩が駆け寄って来るのが見えた。
その後ろには、二人を追いかける都の姿。
「卒業おめでとうございますっ」
あっという間に、後輩は翔を囲むように挨拶していた。
「佳奈ごめんっ」
追い付いた都は、顔の前で両手を合わせ、小さな声で謝る。
「別にいいよ」
苦笑いを浮かべて応えると、
「冷静だね?」
少し不思議そうな顔をした。
「何が?」
「岡田の事好きなんでしょ?」
言いながら、視線をずらす都。
何が言いたいのかは、すぐに分かった。
都の視線を追って、目に写ったのは、翔と仲良く話す後輩。
翔は優しく笑って対応している。
冷静…。
私は翔が好きだけど…その光景に嫉妬なんてしない。
翔はモテるから、もちろん彼女だっていた。
その時でさえ…嫉妬という、特に特別な気持ちを抱いた事はなかった。
それは…
翔が本気じゃないのが分かってたから。
彼女がいた時も、女の子に囲まれている時も、そして今も…
翔は本当の笑顔を向けてはいない。



