やった!!苺先輩と夏祭りデートなんて嬉しすぎる!
電話を切った後、心を弾ませながら教室に戻ると、体育館シューズを片手に持った檜山が、教室を出ようとしていた。
「あれ、数学教えてくれるんじゃ…?」
俺が言うと、檜山はいかにも不機嫌そうな顔でこっちを見た。
「やっぱ辞めた。早く体育館行かなきゃ怒られるし。じゃあね」
「えっ!?ちょっ…」
引き止める間もなく、檜山は逃げるように教室を出た。
パタパタと廊下を走る足音だけが響く。
「…い、意味分かんねー!」
課題どうすんだよ…俺。
がっくりと肩を落しながら自分の席に戻ると、解いた覚えのない回答欄が1つだけ埋まっていた。
答えが書いてある…わけがなく、
一言“バカ”と書かれていた。
「あいつっ…」
最近大人しくなったと思ってたのに!!
そういえば、久しぶりに喧嘩を売られた。中学の時はこんなの日常茶飯事だったのに。
さっきの檜山の姿をぼーっと思い出す。
体操服に体育館シューズ。
そっか…あいつ部活始めたんだ。
何故だろう。
置いていかれるような…“寂しさ”を、心の奥に感じていた。



