13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


やった!!苺先輩と夏祭りデートなんて嬉しすぎる!

電話を切った後、心を弾ませながら教室に戻ると、体育館シューズを片手に持った檜山が、教室を出ようとしていた。

「あれ、数学教えてくれるんじゃ…?」

俺が言うと、檜山はいかにも不機嫌そうな顔でこっちを見た。

「やっぱ辞めた。早く体育館行かなきゃ怒られるし。じゃあね」
「えっ!?ちょっ…」

引き止める間もなく、檜山は逃げるように教室を出た。

パタパタと廊下を走る足音だけが響く。

「…い、意味分かんねー!」

課題どうすんだよ…俺。

がっくりと肩を落しながら自分の席に戻ると、解いた覚えのない回答欄が1つだけ埋まっていた。

答えが書いてある…わけがなく、

一言“バカ”と書かれていた。

「あいつっ…」

最近大人しくなったと思ってたのに!!

そういえば、久しぶりに喧嘩を売られた。中学の時はこんなの日常茶飯事だったのに。

さっきの檜山の姿をぼーっと思い出す。

体操服に体育館シューズ。

そっか…あいつ部活始めたんだ。

何故だろう。
置いていかれるような…“寂しさ”を、心の奥に感じていた。