「ごめん檜山!ちょっと待ってて!」
その着うたに過敏に反応した俺は、慌てて携帯を手に取り教室を出た。
一人一人個別に着信音を設定しているわけじゃない。だけど、流れ続ける着うたは、一人だけ特別に設定していた曲。
「もしもしっ!?」
『あ、翔くん?』
携帯から聞こえる、可愛らしい声の主は…苺先輩。
『さっき電話かけた?どうしたの?』
教室にみんなが居なくなってから、一度苺先輩に電話をかけていた。
補習をしながら、ふと思い浮かんだ事があって。
「苺先輩、10日って空いてる?」
『10日?来週の土曜日だっけ?』
「そう!一緒に○○神社の夏祭り行かない?」
夏祭り…クラスメイト達が話しているのを聞いた瞬間、「苺先輩と行きたい!」と思った。
『…』
「もしもし?苺先輩?」
『あっ…ごめん。うん、いいよ』
急に無言になるから、ダメかと心配した。
『今由紀ちゃんと一緒に居るから、聞いてみるね』
「待って!!」
『どうしたの?』
苺先輩の友達と、それから俺の友達と、みんなで遊ぶのも悪くない。
でも…
「二人で…行きたいんだけど」
照れる気持ちを抑えて言うと、苺先輩は少し戸惑っていたけど、『分かった』と応えてくれた。



