13センチの片想い。私とアイツの恋の距離



もう潮時。

きっとこのまま想い続けても、振り向いてくれる事はない。

翔が津田先輩に恋した事は、この長い片思いに終止符を打つ良いきっかけ。
だから、私は昨日バレー部に直ぐさま入部した。

翔を想う時間は、もういらないから。
翔を忘れたいから。


「高校生活、やっぱバレーに生きる!」

笑顔を作って明るく言った。…のに、都の表情は暗いまま変わらず、妙な事を口にする。

「佳奈…泣いた?」
「はい?」
「泣いた?」

どうしてだろう。
真剣な顔をして泣いたかと聞く都が、少し怖く思えて目を逸らす。

「こんな事で泣いたりしないよ」

小さな声で、ポツリと呟いたその言葉通り、泣きそうな気分にこそなったものの、実際に涙を流したりはしなかった。

だって、

失恋して泣くなんて…みっともない。

「佳奈」
「あー…もうこの話は終わりっ!やっぱ私も何か頼んで来ようっと」

まだ何か言いたげな都を振り払うように、私は席を立った。


本当に…もう“終わり”。

もう翔の事は諦めたんだから…。



恋の終わらせ方も知らずに、私はただ自分の気持ちから逃げていたんだ…。