もう潮時。
きっとこのまま想い続けても、振り向いてくれる事はない。
翔が津田先輩に恋した事は、この長い片思いに終止符を打つ良いきっかけ。
だから、私は昨日バレー部に直ぐさま入部した。
翔を想う時間は、もういらないから。
翔を忘れたいから。
「高校生活、やっぱバレーに生きる!」
笑顔を作って明るく言った。…のに、都の表情は暗いまま変わらず、妙な事を口にする。
「佳奈…泣いた?」
「はい?」
「泣いた?」
どうしてだろう。
真剣な顔をして泣いたかと聞く都が、少し怖く思えて目を逸らす。
「こんな事で泣いたりしないよ」
小さな声で、ポツリと呟いたその言葉通り、泣きそうな気分にこそなったものの、実際に涙を流したりはしなかった。
だって、
失恋して泣くなんて…みっともない。
「佳奈」
「あー…もうこの話は終わりっ!やっぱ私も何か頼んで来ようっと」
まだ何か言いたげな都を振り払うように、私は席を立った。
本当に…もう“終わり”。
もう翔の事は諦めたんだから…。
恋の終わらせ方も知らずに、私はただ自分の気持ちから逃げていたんだ…。



