「翔ね、本気で好きな人が出来たらしいの。相手は2年生」
「え…先輩?」
都は『意外』って顔をする。
「うん。でも小さくて、先輩っぽくない感じかな…。翔と出会ったのも、翔が先輩をタメと間違えたのが始まりだし」
説明しながら思い出す、津田先輩の姿。
私と津田先輩は、直接の面識は一度もない。だけど、よく知っているのは、翔が追いかけてる人だから。
「…付き合ってんの?」
恐る恐る聞いてくる都に、首を左右に振った。
「知らない。だけど翔は付き合えるまで、先輩を諦めないと思う。だから…部活もしないんだって」
私は苦笑しながら、「バカだよね」と付け足した。
「佳奈は?岡田の事、どうすんの?」
気付けば、目の前の都の表情は『心配』そのものに変わっていて、その表情に胸がぎゅっと苦しくなる。
だけど…笑わなきゃ。
「私は潔く諦めるよ。先輩にはどうやっても敵いそうにないし」
「それでいいの?」
「うん」
津田先輩は小さくて、ほんわかした感じの優しそうな“女の子”。
対する私は正反対で…
翔の好きな“女の子”にはなれそうもない。



