「じゃあ、俺ら帰るんで!行こう、苺先輩」
「えっ、あ…うん」
いつものノリにつられたのか、からかうばかりの間先輩から逃げたかったのか、苺先輩は俺と一緒に学校を後にした。
避けられてもおかしくない状況だから、“隣を歩いてくれてる”それだけの事が、とても嬉しい。
ただ、何を話したらいいか分からなくて、俺も苺先輩も無言だった。
そんな沈黙にも慣れた頃、
「あのっ…翔くんっ」
突然、苺先輩が俺の名を呼んで立ち止まった。
「何?」と尋ねながら振り返ると、そこには苦しそうに顔を歪めた苺輩がいた。
そして、ゆっくりと口を開く。
「さっき…『まだ彼氏じゃない』って言ったけど…あたしは」
「何も言わないで」
俺は苺先輩の言葉を、途中で遮った。
聞かなくても…分かってるから。
さっき苺先輩は間先輩に“彼氏じゃない”ってハッキリ否定した。
つまりは…俺と付き合う事は考えていないっていう事だ。
苦しいくらい、ちゃんと分かってるよ。
でも、
「まだ早いよ。昨日、告白したばっかじゃん」
これが今、素直に思っている事。
「苺先輩、明日の天気分かる?」
俺は空を見上げながら、相変わらず思い詰めた表情の苺先輩に、質問した。



