13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


「で、一人で何してたの?」

都と後輩が待っているのは分かっているけど、もう少し二人で話していたくて話題を振る。
すると、フッと翔は微笑んだ。

「檜山、この木見て」
「え…?」

翔の視線を追って横の木を見る。
翔が何を見ていたのか、それはすぐに分かった。

どっしりとした幹の大きな木。
そんな太い幹から放射状に伸びた、沢山の枝。

その中の一本の枝に…

纏わり付く様に付いた薄いピンク色。

「桜…?」

今は3月上旬で、花が咲くのはまだ早い。
だけど、ほんの少しだけだが確かに花が咲いていた。

「そう、これ見てた」

もう少ししたら、普通に見られる光景なのに…
もっと多くの花を見られるのに…

何かに引き付けられるみたいに、真っ直ぐに桜を見る翔。


「翔でも花とか見る事があるんだ?」

そんな翔の表情に、何故か恥ずかしくなって、つい皮肉を言ってしまう。

「檜山は女でも興味なさそうだもんな!」
「はぁ!?」

結局いつもの様に口喧嘩が始まろうとした…その時、

「せんぱーいっ!」

高くて可愛いらしい声がした。