「俺…苺先輩の事、諦めません」
言いながら、脳裏に浮かぶワンシーン。それは、今日のスポーツ大会の光景。
苺先輩が一心に見つめていた、背が高く、整った顔立ちの先輩…。
今日、初めて見た“西藤先輩”。
あまりに切なそうに見つめてるから、秘めているつもりだろう気持ちに、気付いてしまった。
普通に考えたら、あんなカッコイイ人相手に、勝算なんてない。
だけど、西藤先輩には彼女が居る。それも、芸能人かと思うくらいに綺麗な人。
だから大丈夫。
苺先輩を西藤先輩に、取られる心配はない。
なのに…嫉妬している。
“同級生”という近い立場に。
苺先輩に想われている事に。
「苺先輩が好きだから、一人の男として見てもらいたいから…敬語も、もうやめる」
先輩に対して、タメ語を使うなんて失礼な事は分かっている。
だけど、少しでも同じ目線に立ちたかった。
苺先輩からの返事はない。
俺の腕の中で、きっと困った顔をしてる。
ごめん…。
でも、
「絶対、彼女にする」
一度気付いた気持ち…告げた気持ちは、どんどん拍車がかかって…
もう引き返せない。
抱きしめる腕に力を込めた。



