俺に向けられた苺先輩の顔は、すごく悲しそうな顔だった。
下がった眉に、きつく閉じられた口元、目にはうっすらと涙さえ溜まっていた。
それは…告白された事に、困惑するだけの表情ではない。
誰かを想うが故に、苦しんでる顔だった。
分かっていたけど…ツライ。
“そんな顔を俺に向けないで”
そう思う自分自身は今、どんな顔をしているのだろう。
笑っているようで、泣いているような…自分の表情が分からない。
「あのっ」
俺を心配するように、苺先輩がベンチから立ち上がろうとする。
その瞬間、俺は苺先輩の手を掴んで、自分の体に引き寄せた。
「ちょ…翔くんっ!?」
俺の腕の中に捕われた苺先輩は、戸惑いの声を上げる。
「大丈夫…子供帰りましたから」
「翔くんっ!」
違うとばかりに声を荒げる苺先輩。周りの目を気にして、俺の名前を呼んだのではない事くらい分かってる。
だけど、離したくない。



