13センチの片想い。私とアイツの恋の距離

☆翔side☆


「苺先輩っ!」

教室から階段を降りてきた俺は、玄関に苺先輩の姿を見つけるなり、大声で呼んだ。

「遅くなってごめんなさいっ!」

顔の前で両手を勢いよく合わせると、まるでお参りみたいに「パンッ」と音がした。

「いいよいいよっ」

きっと結構待っていたはずなのに、怒ることなく控えめに笑う姿に癒される。

「じゃあ、帰りましょう!」
「うんっ」

本当はもう少し謝るべき。
だけど、それが出来なかったのは緊張していたから。

ゆっくりと通学路を歩きながら、他愛もない話をするけど、頭の中は違うことでいっぱいだった。



「苺先輩、ちょっと寄り道しても大丈夫ですか?」

タイミングを見計らって、切り出す。

「え…あ…うん」
「帰り道からちょっとずれるんですけど、ついて来て下さい」

躊躇いがちな苺先輩の返事。
そして、何も言わず黙ってついてくる姿に、
きっと苺先輩も今から俺が何をしようとしているか、悟っているんだろうと思った。

ドキン…ドキン…

目的地に近付く度に緊張が増す。

二人して無言で歩きながら、俺は頭の中で何を言うか、精一杯整理した。