一瞬迷ったけど、“頑張ってね”とは言えなかった。
翔が津田先輩と付き合う事を、望んではいないから。
だけど、私は翔の背中を押していて…
愚かな自分に笑えてくる。
今から翔は津田先輩に告白する。
もし、私の背が低かったら-…。
一瞬考えてしまったけど、すぐにやめた。
“もしも”なんて有り得ない。
私は現実を受け止めるしかない。
みんなに「有り得ない」って言ってたじゃない。
アンバランスな恋だって、分かってたじゃない。
当然の様に翔は“女の子”に恋をしただけよ。
だけど…
胸がチクチクするのは、
ほんの少し期待してたんだ。
高校生になったら-…。
「はぁ…」
泣きたいような、笑いたいような、どっちも混ぜた顔でため息をついて、足を進める。
「……バレー部行ってみよ」
私は教室へと入る。
入れ違いになるように、
翔は教室を出て行った。



