「うるせーな!長身の檜山には分かんねーよっ!」
「…」
私は俯く。
そして、フッと笑った。
「早くしないと!先輩待ってるんでしょ!」
パッと顔を上げて急かす様に、翔の背中を叩く。
「そうだった!やっべー…告る前から、こんなんだったらフラれるし!」
叩いた反動でよろけながらも、翔は教室に戻ろうと急ぐ。
そんな後ろ姿を見ながら、
“長身の佳奈には分からない”
翔の言葉を頭の中で繰り返す。
何なのよ…。
出会って間もない先輩が、翔の何を知ってるのよ…。
ただ、二人とも少し背が低いだけ。
津田先輩が翔を庇ったのなんて、ただの馴れ合いじゃない…。
私の方が翔を、ずっと沢山知ってる。
私の方が…。
「檜山?」
名前を呼ばれてハッと我に返ると、翔が教室に入る一歩前で、こっちを見ていた。
何…?
目が合って、ドキッとする。
「檜山、じゃーなっ!」
翔はニッと笑う。
「…じゃあね」
返事すると、翔は今度こそ教室の中に入って行った。



