13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


「え…」

思わず足を止めそうになった。

だけど、階段に差し掛かっても、スピードの落ちない翔の足を、一生懸命追い掛ける。

「何でっ?」

階段を登りながら、切れる息で聞いた。

「…」

翔は何も答えない。
ただひたすら階段を上る。

なんで何も言わないの…?

心の中で思いながらも、何かが怖くて口に出せない。

もうすぐ、私達1年生のクラスがある3階。

翔は津田先輩と一緒に帰るんだっけ…。

私のせいですっかり遅くなってしまったから、きっと津田先輩は待っているだろう。
どこで待っているか知らない私は、教室の前で待っていたら…なんて考えながら、最後の1段を登った。

目の前に広がる長い廊下。
私達は真っ直ぐ早足で進む。

良かった…。

5組の教室が見えて、私はホッとした。
教室の周りには、見慣れたクラスメート達だけ。
津田先輩らしき姿は、どこにもない。

「…檜山」

教室のすぐ前で、翔は足の速度を急に落として、私の名前を呼んだ。

「何?」

さっきの質問に答えてくれるのだろうか?
私も遅れて足を弱めた。