雰囲気が一気に穏やかなものに変わる中、私は翔を見た。
翔は…一生懸命に津田先輩を見つめていた。
「-…」
翔が津田先輩を見る目線。
翔が私を見る目線とは全く違う。
それは、男の子が女の子を見る自然な目線。
しばらくして、翔は津田先輩を見るのを止め、視線を床の方へと落とした。
胸が苦しくなる。
翔…何を考えてるの?
「翔くん?」
「えっ、あっ、ごめん何っすか?」
津田先輩がいきなり翔に声をかけた。
私もつられて我に戻り、周りを見れば、3年生も、カッコイイ先輩も、綺麗な人も、いつの間にか居なくなっている。
どうやら事は大きくならずに、収まったみたい。
翔に喧嘩を売って来た3年生には、未だ腹が立っているけど、居なくなっていて安心した。
「次の試合、応援するから」
津田先輩は翔に笑う。
「ありがとうございます」
翔も津田先輩に笑う。
そんな二人の姿に、私は誰にも聞こえないため息をついて、背を向けた。
ほんの少し…嫌な予感がしてた。



