13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


「岡田!次の試合、こっちのコートだぜ?」
「おー…」

同じチームのクラスメートの呼びかけに、適当に返事した。

天気と熱気で蒸し返った体育館。
俺の目は周りのコートをキョロキョロと見て、一人の人物を探す。

苺先輩…。

いくら体育館という限られた空間で、外での種目に出ている人もいると言っても、普通の体育の授業より遥かに多い人数。
何の手掛かりもなく、苺先輩を見つけるのは難しい。


「岡田!」
「分かったよ!」

急かすように呼ぶクラスメートに少し苛立ちながらも、大人しく従って次のコートに移動する。

到着したそのコートは、両チームが並んで礼をしており、たった今試合が終わった様子だった。


「あっ!」

コートから出る集団の中の一人が、俺を見て声を上げた。

ショートヘアの、体操服が似合う活発そうな女の子…。

「あ、中野先輩っ!」

1つ年上の彼女は、苺先輩の友達。

「今、試合だったんですか?」
「負けたけどね」

頷きながら苦笑する中野先輩を見て、ピンと来た。

「これから暇じゃないっすか…?」
「暇って言えば暇だけど…?」
「苺先輩、連れて来てくれませんか!?」

お願いしますとばかりに、顔の前でパンッと音を立て、両手を合わせる。

「あーそういう事か…いいよ」

中野先輩は笑顔で引き受けてくれた。