「じゃあ、俺も戻るかなぁー」
椅子から立ち上がった俺は、弁当を片付ける苺先輩を見た。
視線に気付いた先輩は「どうしたの?」と、言わんばかりの顔で俺を見る。
やっぱり…。
「苺先輩、ちょっとこっち来て」
「えっ!?」
先輩の腕を引いて、俺は教室を出る。
時間がないから遠くへは行けなくて、すぐに足を止めた。
苺先輩の顔に、少し自分の顔を近付けて…手を伸ばす。
俺の人差し指が、苺先輩の目の下に軽く触れると、苺先輩は一度びくっとした。
「なっ、何?」
「苺先輩…大丈夫?」
「え?」
「泣いたでしょ?何かありました…?」
「っ-…!!」
苺先輩は驚いた顔をすると、顔を真っ赤にさせて俯いた。
間先輩が居たから言えなかったけど、本当は苺先輩が帰って来た時に分かった。
ほんの少しだけ赤くなった目。
多分、普通なら気付かない。
だけど、好きな人だと…ほんの少しの違いさえ分かってしまうみたいだ。
黙り込んでしまった苺先輩に、俺はどうしたらいいか分からなくて、苺先輩の頭を撫でた。



