「じゃあ、メグの話も聞いて?」
間先輩は巻いた髪を、自分の指でくるくる巻きながら話しを続ける。
「メグ…西藤くんが好きなんだぁ」
ポト…
視界にプチトマトが転がるのが目に入って、机の隅に止まった。
落としたのは…苺先輩。
「苺ちんってば、そんなに驚かなくても~。はい」
「あ、ありがとう」
プチトマトを拾ってくれた間先輩に、苺先輩は笑って返すけど、動揺しているのはバレバレだった。
何に動揺したのか。
間先輩に好きな人が居る事?
そんなの普通の事だ。
心当たりは一つ。
“西藤くん”
「西藤先輩って…もしかして、めっちゃカッコイイって噂の人っすか?」
「そうそう!やっぱり1年生の間でも噂なんだぁ~」
両手を合わせて、間先輩は嬉しそうに頷く。
実際に会った事はないけど、俺自身少し人気者で、女子と話す機会が多いから知ってる。
西藤先輩。
背が高くて、整った容姿の先輩は、陰ながら女子に“王子”なんて呼ばれるくらいだとか。
でも…まさか、そんな人を?
俺はそっと苺先輩を見る。
控えめで平凡を絵に書いた様な苺先輩が、そんな人を好きだなんて思えない。
じゃあ、ただの憧れ…?
でも、苺先輩は“王子”とか騒ぐ女子を、どっちかと言うと謙遜するタイプなのに…。



