「……お前、何言ってんの?」
私の耳に届いた翔の声は、本当にただ疑問をぶつけただけの、軽すぎる声だった。
「なっ、何って……」
意外すぎる反応に、私は思わず振り返ろうとする。
だけど、それは叶わない。
私の体に回された腕。
それは、私を後ろに引き寄せて……
手のひらから、桜の花びらが滑り落ちた――。
私を包むのは、嗅ぎ慣れた香水の甘い香りと、温かなぬくもり。
「今日結婚した人と付き合えって、無茶言いすぎ」
背中から私を抱き締めた翔は、苦笑しながら言った。
「っ……」
何で……。
どうして笑っていられるのか、分からない。
昔だったら絶対に、口喧嘩になっていたはずなのに……。
「なぁ……怒ってる理由、ちゃんと聞かせて?」
翔の声色はどこまでも優しくて、泣きそうになる。
いつの間にこの人は、こんなに大人になったんだろう……。
ずっと見てきたはずなのに、分からなくて。
それに対して自分は子供すぎて。
置いていかれているような気がして、本当に悔しい……。



