13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


「なっ!どうしてそうなんのよっ!!」

私は気持ちのままに、目の前の翔を両手でドンッと押した。

当然、後ろによろける翔。

やりすぎたかも!って、一瞬不安になるけど、翔は倒れることなく2、3歩下がって、両膝に手をついて止まった。

表情を確認すると、顔をくしゃくしゃにして、息を殺して笑っていて……怒っている様子なんて、みじんもない。

もう、完全に翔のペースにのまれてる。

昔は私の方が上手く言い返せていたのに、付き合い始めてからは、それが出来ない。余裕がない。

そんな私を翔は面白がって、こんな風にからかって……。

私は負けず嫌いだから、悔しいと、言い負かしてやりたいと思う。

――だけど、嫌じゃない。

むしろ……嬉しい。
こんな状況に、幸せを感じてる。


「……翔」

今だ笑い続ける彼の名前を、私は小さく呼んだ。

すると翔は、聞き逃すことなく「何?」と、顔を上げる。


「私の背なんて……すぐに追い越してくれるんでしょ?」

「まぁねっ!」


笑顔と一緒に差し出された、翔の片手。

……好き。大好き。

私は微笑んで、その手を取った。