「……私に……なの? 津田先輩じゃなくて……?」
「は? 何で苺先輩になんだよ」
目に映る桜の花が、じわじわとぼやけてく。
「……あ、もしかして忘れた?」
耳に入った翔の声に、私はハッとして、ぶんぶんと首を振った。
「忘れてないっ……」
私が忘れるわけなんかない。
中学の卒業式の日、 翔が一番早く咲いた桜を、私に教えてくれたこと――。
でも、そんなの覚えてるの、私だけだと思ってた。
だって、あの時の私達の関係は特別なものじゃなかったし、特別な言葉なんてひとつも交わさなかったから。
「佳奈、花とか興味なさそうだもんな!」
あの時と同じ言葉で、翔は私をからかって笑う。
言い返したいのに、言葉は声にならなかった。
よそ見ばっかして、私を見てくれない……そう拗ねていたけど、本当は私のことを真っ直ぐに見てくれていたんだ……。
それがとても嬉しくて、私は視界を滲ませたまま、微笑んだ。



