「あっ、えと……翔!?」
――怒らせた。
そう思った私は、慌てて翔の後を追う。
翔はやっぱり、上を見上げて歩いていて。
「あの……っ」
「てか俺、苺先輩に会おうとして会ったわけじゃないし」
……え?
ごめんって、謝るつもりだったのに……翔の言葉が邪魔をした。
「俺が探してたのは、お前。そしたら、たまたま苺先輩に会っただけ」
足を止めて、振り返って私を見て、呆れたように言われた言葉。
私を……探してた?
「何で……」
目を丸くして聞く私に、
「見せたいものがあったから」
翔はムスッとした顔を、フッと笑顔に変えて言った。
「見せたいもの……?」
それは何かと問う前に、翔は人差し指を一本立てる。
その瞬間、“見せたいもの”の正体が何なのか、頭の中に浮かんだ。
そのまま翔は上を見上げて、私も追うように見上げる。
「……」
やっぱりそうだ。
思った通り。
翔が指差した先にあったのは、
茶色の枝に付いた、ひとまとまりの蕾。
その中のひとつが、淡いピンク色を覗かせている。
そう……それは、桜の花――。



