「何ため息ついて、むくれてんの?」
「えっ……」
パッと前を向くと、上ばかり見ていたはずの翔の目が、私を見ていた。
ため息……?
どうやら、自分でも無意識のうちに、ため息なんかをついていたらしい。
自己嫌悪に陥っていたから、それは素直に認められる。
だけど、
「む、むくれてなんかないしっ!」
「ほら、むくれてんじゃん」
「ーっ!」
翔の指摘は正しくて、私は思わず口ごもる。
言い返したいけど、私を見てくれないから……なんて、絶対に言えない。
「翔がっ……どこにいるかと思えば、津田先輩と会ってデレデレしてたからでしょっ!」
――本音とは違う。
今日は卒業式だから、翔が津田先輩と会っていたのは、当然と言えば当然のこと。
もちろん、怒ってなんかいない。
でも、とにかく翔を責めたくて、口走ってしまっていた。
「何だよその言い方……」
口をへの字にする翔。
「別にデレデレなんか、してねぇし」
繋いだ手をするりと離して、私に背中を向けた。
一歩、二歩と距離が開く。



