「取れた……」
俺がそんなことを考えている間に、ボタンは取れたみたいで、佳奈は立ち上がった。
身長の高い佳奈と、身長の低い苺先輩。
露になったその差に、改めてふたりの違いを感じる。
「はい」
くるりと俺に向き直った佳奈は、俺の手にボタンをひとつ乗せた。
校章の入った、ずしりと重いブレザーのボタン。
「苺先輩、ありがとう!」
「ありがとうございます」
「いえいえっ!」
立て続けにお礼を言われて、笑顔で返事する苺先輩のブレザーは、ボタンを2つ無くしたせいで、少しだらしなく開いていた。
「あ、本当にそろそろ行かなくちゃ……」
腕時計を見ながら言う佳奈。
「分かったよ」と、短く返事して、俺はまた苺先輩に体を向ける。
すると、苺先輩も俺を真っ直ぐに見上げて、微笑んだ。
「……っ」
もう、これが最後。
そう思うと、胸の奥から熱くなって……喉に言葉が詰まる。
でも、
「苺先輩、本当にありがとうございました。俺、先輩に出逢えて本当に良かった」
改めて言わなくても分かることでも、改めて言わなきゃならなかった。



