私はその手にそっと触れて、
「次は亜耶の番だよ」
先輩には聞こえない小さな声で、囁いた。
亜耶はそれこそ、恨めしそうな目で私をじっと見るけど、
「……分かった」
やっと笑顔を浮かべ、片足をゆっくりと自ら前へ出した。
一歩、二歩下がって……私と同じ位置に立つ。
「頑張れ」と、亜耶の背中を優しく押して、私はすれ違うように階段を登った。
言いたいこと……全て言うのは難しいと思う。
でも、ひとつでも多く亜耶の想いが伝えられますように。
少しでも多く、亜耶の気持ちが伝わりますように。
「卒業おめでとうございます」
亜耶の振り絞った小さな声が、私の耳にも届いた。
藤原先輩に渡したチョコレート。
ラッピング袋も、中身も、亜耶と全く一緒。
でも……きっと違う味がする。
私と亜耶では、込めた気持ちが違うから――。
どっちが美味しいですか……?
なんて、野暮な質問だけど、
心を打たれるのは、亜耶の方だと思った。
恋する気持ちは……無敵だから。
頑張る亜耶の姿を見ていたら、私も無性に会いたくなった。
私の恋する相手に――。



