13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


てっきり逃げ出したと思っていたけど……逃げなかったんだね。

「話したいことあるんでしょ? 行っておいでよ」

私の言葉に、亜耶はただ黙って瞳を揺らす。

好きだから……一歩踏み出すのが、とてつもなく怖い。

痛いほどに分かる、その気持ち。

でも、ここで踏み出さなかったら、亜耶は絶対に後悔する。

私が亜耶のために出来ること。
それは、甘やかすことじゃない。

私は「ふぅ」と、ため息にも似た大きな息を一度吐いて、

「ごめん」
「えっ?……か、佳奈ちゃんっ!?」

亜耶の手を強く引いて、階段を降り始めた。


「やっ……ちょっと!」

可愛らしく抵抗する亜耶。
でもすぐに大人しくなったのは、

きっと藤原先輩と目を合わせたから――。

「……」

先輩は目を見開いて、さっき私が話しかけた時よりも驚いた顔をして、こっちを見ていた。


踊り場まであと1段という所で、私は足を止める。

「じゃあ、私はここで」

振り返って、私より2段ほど高い位置にいる亜耶を見ると、顔を真っ赤に染めて俯いていた。

チョコを持つ手は、微かに震えている。