「佳奈ちゃん、頑張ってね」
先輩の声に私は頷く。
熱くなる目尻。
今にも溢れ落ちそうな涙を必死に堪えて、
「藤原先輩も頑張って下さい」
声こそ震えてしまったけれど、精一杯の笑顔を作った。
藤原先輩と初めて言葉を交わした、あの日。
私は落ち込んでいて、とても冴えない顔をしていた。
だから今日は……最後は、笑顔を見て欲しかった。
そんな私の気持ちが伝わったのか、先輩は安心したような静かな笑顔を浮かべて、手を握る力をふっと弱めた。
どちらともなく離した手。
「じゃあ、また後で」
この後のバレー部の集まりを指す言葉に、私は頷いて、続けて一礼して背中を向けた……けど、
……あっ!
「先輩にチョコ渡したい女の子が、もうひとりいるんですっ」
慌てて振り返ってそう伝えると、私は急いで階段を登った。
3階へと繋がる階段の先。そこに隠れるようにいたのは……亜耶。
「待てっ!」
私の顔を見るなり、逃げようとした亜耶の背中を捕まえる。
「盗み聞きなんて趣味悪いよ?」
「……」
言うと亜耶は、バツの悪そうな顔をして……私は微笑んだ。



