檜山、ごめんっ!
心の中で謝って、苦笑しながら小走りで急ぐ。
“走って来なくていいよ”
そう言われたにも関わらず、走ってしまうのは嬉しいからだ。
合宿から戻って来て、やっぱり俺と苺先輩の距離は、縮んでる気がしてた。
登下校は前からだけど、最近では昼休みも一緒に居るのを、受け入れてくれてる。
まるで付き合ってるみたいに、順調に仲良くなっていて、“初恋”が楽しくて仕方ない。
だから、檜山には悪いけどチーム分けなんかどうでも良くて、早く苺先輩に会いたかった。
「失礼しますっ!」
あれ…?
いつもの様に軽く挨拶をして教室に入ったものの、苺先輩の姿はない。
他の先輩達は居るから、移動教室だった訳でもないだろう。
どこ行ったんだろう…。
弁当を持ったまま、立ち尽くしていると、
「翔くん…だっけぇ?」
聞き慣れない声がして振り返る。
声をかけて来たのは内巻きに巻いた髪が印象的な、今まで話した事のない先輩。
「苺ちん、さっき教室出てったよぉ?」
「そうなんですか…」
「うん。一緒に待とう」
そう言って、その先輩は苺先輩の席に、空いている椅子を2つ寄せた。



