13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


“名前で呼んで”って、何だよそれ。

まさか檜山が、そんなことを言い出すとは思わなくて……。

こういうのを“ギャップ萌え”って、言うんだろうか。

――愛しくて、たまらない。



「待って」

駆け足で追いかけて、檜山の片手を捕まえる。

「……何よ」

振り返って俺を睨むその目は、ほんの少し潤んでいて、

「なっ!何で笑うのよ!?」

思わず笑ってしまった俺を、檜山は見逃すことなく咎める。そして、

「どうせ……馬鹿な奴だって思ってるんでしょ」

俺の返事を聞かずに、拗ねた表情を見せて、視線を外した。


俺と檜山が“恋人”なんて、信じられないくらい不思議だ。

だけど、ちゃんと好きという気持ちは存在していて。

それは日増しに大きくなっていて。


「……思ってないよ」

静かに言うと、檜山はもう一度俺を見た。


「佳奈、好き」


初めて呼んだ、名前。

きっとこうして、少しずつ関係を変えてゆくんだと思った。


苺先輩、俺……約束守ったよ。

苺先輩はどうですか……?


恥ずかしそうに俯く檜山を見ながら、溶けるような青空に向かって、想いを馳せた。