“名前で呼んで”って、何だよそれ。
まさか檜山が、そんなことを言い出すとは思わなくて……。
こういうのを“ギャップ萌え”って、言うんだろうか。
――愛しくて、たまらない。
「待って」
駆け足で追いかけて、檜山の片手を捕まえる。
「……何よ」
振り返って俺を睨むその目は、ほんの少し潤んでいて、
「なっ!何で笑うのよ!?」
思わず笑ってしまった俺を、檜山は見逃すことなく咎める。そして、
「どうせ……馬鹿な奴だって思ってるんでしょ」
俺の返事を聞かずに、拗ねた表情を見せて、視線を外した。
俺と檜山が“恋人”なんて、信じられないくらい不思議だ。
だけど、ちゃんと好きという気持ちは存在していて。
それは日増しに大きくなっていて。
「……思ってないよ」
静かに言うと、檜山はもう一度俺を見た。
「佳奈、好き」
初めて呼んだ、名前。
きっとこうして、少しずつ関係を変えてゆくんだと思った。
苺先輩、俺……約束守ったよ。
苺先輩はどうですか……?
恥ずかしそうに俯く檜山を見ながら、溶けるような青空に向かって、想いを馳せた。



