「あー…後からでっ!」
そう言って俺は逃げようとした…けど、
「翔っ!」
檜山は俺の肩をしっかり持って止める。
見上げる檜山の顔は…怖い。
「女子はこっちが決めるから、男子は翔がちゃんと決めてよね!」
「…分かったよ」
檜山は責任感が強いから、決めるまで離してくれないだろう。
しょうがない…。
俺は一呼吸置いて、
「男子注目ー!!」
出来る限り大きな声で叫んだ。
すると、男子はともかく女子も…クラス全員がこっちを見る。
それでも、俺は遠慮なく続ける。
「スポーツ大会のチーム分け、出席番号順でいいー?」
「ちょ…ちょっと!」
隣で檜山が焦った声を出したが、男子達から帰って来た返事は、
「別にいいけどー」
「了解」
等という、承諾する物だった。
まだ入学して間もないし、何の賞品もないスポーツ大会に熱くなる理由もない。
女子みたいに仲良しグループがあるわけでもないから、みんなチームなんてどうでも良いに違いなかった。
「そう言う事で決まったから」
俺は勝ち誇った様に、ニッと檜山に向かって笑って見せ、何か言われる前にと急いで教室を出た。



