「檜山?」
背中からかけられた聞き覚えのある声に、まるで何かで射ぬかれたみたいに体がビクッと反応した。
振り向かずとも声だけで、誰だか分かってしまう自分……。
それでも、今ここで会うなんて信じられなくて、ゆっくりと振り返ってみると、
「翔っ……」
そこにはやっぱり、思った通りの人がいた。
だけどその隣には、予想しなかった人の姿もあった。
「明けましておめでとう」
私に向かって優しく微笑んで挨拶してくれたのは……翔のお母さん。
「おめでとうございますっ」
慌てて頭を下げて挨拶すると、「大人っぽくなったね」と言われて、はにかんだ。
「こんな所で何してんの?」
「あ、えっと……都と約束してたんだけど、何か来れなくなっちゃったみたいで帰ろうかと……」
ふたりだけなら、「関係ないでしょ」とか、相変わらずな返事をしていたと思う。
でも、翔のお母さんの前でそんなことは言えなくて、正直に話してしまっていた。
翔は「ふーん」と、何か考えるような返事をした後、
「母さん、悪いけど先帰ってて。俺、檜山ともう一回行ってくる」



