「檜山はバレーすんの?」
「あ…うん」
「そっか、頑張れよ」
「…」
“考えていない”
そう言ったのに、
“頑張れよ”
その言葉は…バレー部に入らない、そういう意味に聞こえた。
まだ決まったわけじゃないけど、やっぱり少しショックを受ける。
「檜山?」
そんな私は、翔に呼ばれて顔を上げた。
すると、翔は顔を少し赤くして目線を外して喋り出した。
「あの…さ、先輩の事聞いてくれて…ありがとな。
こんなん始めてで…誰にも言った事なかったから…檜山に言って、ちょっと気持ち楽になったかも。
やっぱお前って喋り易い。」
-…。
「…そんなんいーから早く行けばっ!」
「は?人がせっかく礼言ってんのに!」
「翔がお礼言うなんて気持ち悪いし!」
「本当可愛くねー!」
言いながら翔は背を向けて、歩いて行く。
良い意味で言ったのだろうけど、
私には辛いだけだった。
“喋り易い”
そんな位置なんていらない。
メール一つで顔を赤らめて喜んでくれる、
その位置が欲しい。
『恋した事ないだろ?』
ふざけないでよ…。
「…あんたに恋してるわよ」
翔が小さな女の子に恋をする前から、
ずっと-…。



