13センチの片想い。私とアイツの恋の距離



「そんなの気にすんの、くだらなくない?」

あの日、教室へ戻って来た私は聞いてしまった。
亜耶の「身長差とか気にする?」という質問に対する、翔の答えを……。

それは、私にとって嬉しいもの。
嬉しいと思う気持ちも、当然のようにあったのに……。

「檜山……。あ、あのさっ」

振り返って、私に気付いて、話しかけてくれようとした翔に、


「……くだらなくて悪かったわね」


私は余計なことをボソッと言って、翔を無視するみたいに教室の中へ入って行った。


翔の答えは嬉しかった。
でも、同時に悔しくなった。

私は数年前の翔の言葉をきっかけに、こんなにこんなに悩んでいるのに、「くだらない」なんてずるい……って。


とは言え、あの時気持ちを抑えられなかった自分を、今は後悔している。

私の名前を出してはいなかった亜耶。黙っていれば私のことだとは分からなかったはずのに、「悪かったわね」なんて、自分でバラすようなことを言ってしまった。

それに、私が怒ったものだから、亜耶が気にしちゃって、何度も謝らせちゃったし……。