「そんなの気にすんの、くだらなくない?」
あの日、教室へ戻って来た私は聞いてしまった。
亜耶の「身長差とか気にする?」という質問に対する、翔の答えを……。
それは、私にとって嬉しいもの。
嬉しいと思う気持ちも、当然のようにあったのに……。
「檜山……。あ、あのさっ」
振り返って、私に気付いて、話しかけてくれようとした翔に、
「……くだらなくて悪かったわね」
私は余計なことをボソッと言って、翔を無視するみたいに教室の中へ入って行った。
翔の答えは嬉しかった。
でも、同時に悔しくなった。
私は数年前の翔の言葉をきっかけに、こんなにこんなに悩んでいるのに、「くだらない」なんてずるい……って。
とは言え、あの時気持ちを抑えられなかった自分を、今は後悔している。
私の名前を出してはいなかった亜耶。黙っていれば私のことだとは分からなかったはずのに、「悪かったわね」なんて、自分でバラすようなことを言ってしまった。
それに、私が怒ったものだから、亜耶が気にしちゃって、何度も謝らせちゃったし……。



