13センチの片想い。私とアイツの恋の距離


「檜山さ、恋した事ないだろ?」

「-…」

一瞬、思わず泣きそうになるくらい、胸が締め付けられる。

だけど、泣いちゃ…変に思わせちゃ…いけない。

「…わ、私だって恋した事くらいあるわよっ!」
「えー?檜山が?」

翔は笑顔を浮かべる。

「何よ?」
「檜山が男と付き合ってんのとか想像つかねぇし!」
「想像しなくていいしっ!」

私がそう言い終わると、翔は立ち上がった。

「戻るの?」
「うん。そろそろ、みんな出て来たし」

翔が振り返って、私も座ったままで振り返ると、うちの学校の生徒の歩く姿が見えた。

「檜山、戻んないの?」
「私は…もう少し」

今、あのクラスメートの中に戻るのは気が引ける。

「そっか…じゃあ」

あ…!

「翔っ!」

一瞬背を向けようとした翔を、私は呼び止めた。

「えっと…部活すんの?」

これを聞くはずだったのに、すっかり話はずれてしまっていた。

「うーん…まだ考えてないけど」
「え…そうなの?」

きっとバレー部に入ると思っていたから、翔の返事は意外な物だった。