目に入ったのは、向かい側の校舎の屋上。
フェンスの内側から、外を見ている小さな人影が、ひとつあった。
「……」
顔までは見えない。だけど、それが誰なのかはすぐに分かって、
「……悪い」
「ん?」
「俺、ちょっと行くとこあった!」
友達に空のパックを押し付けて、走り出していた。
会って何を話すのか……はっきりとした会話が浮かんでいるわけではない。
でも、会って話すなら、今しかない――。
そんな思いが体を動かしていた。
「あっ、翔くん!」
階段を登っている途中。
かけられた声に振り向くと、数段下に中野先輩がいた。
「どこ行くの?」
「あ、ちょっと屋上に……」
答えると、中野先輩は目を見開いて、少し驚いた顔をした。そして、
「もしかして……苺?」
中野先輩の質問に、今度は俺が目を見開く。
「……ってことは、中野先輩もですか?」
「うん。そうだったんだけど……せっかくだから、翔くんにお願いしようかな」
「え?」
「ほら……苺、元気なくて、ね」
寂しげな笑みを浮かべた中野先輩に、何のことだか聞かなくても分かった。



