13センチの片想い。私とアイツの恋の距離

♪佳奈side♪


「はぁっ!? 何それっ!」

目の前の小さなテーブルを、叩きそうな勢いで発せられた声。
ティーカップの中の紅茶が、ゆらりと揺れる。

「結局何も言わなかったわけ?岡田も?」

私が「うん」と頷くと、都は頭を抱えて「意味分かんない……」と、呟いた。

言葉遣いこそ違うものの、その反応は亜耶と同じで苦笑する。


修学旅行を一昨日終えたばかりの、土曜の夜。
お土産を渡すという名目で、都を私の部屋に呼んだ。
話している内容は、もちろん修学旅行のこと……翔とのこと。


「ねぇ、何で言わなかったの?そんなの、言う以外にないでしょ」

「まぁ……そうなんだけど。怖くなっちゃったんだよね……。もし翔がOKしてくれたとしても、すぐにフラれちゃいそうな気がして……」

身長のことを気にしていることまでは、都に話していない。
だから都は、「何それ」って顔をした。

「何か良く分かんないけどさ、佳奈はそれでいいの? そのうち岡田、他の人と付き合っちゃうかもしれないよ?」

珍しくふざけていない真剣な都の眼差しが、刺さるように痛い。

“他の人と付き合っちゃうかもしれない”

その言葉は、もしかしたらもう現実になっているのかもしれない。